データグラフィックで見るベンゲル、エメリとアルテタのアーセナル

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ファンが新加入の選手や監督に対して期待を持って、好意的な目線で見守る時期のことをよく"ハネムーン期間"と評す。

この期間中は基本的に全てがエキサイティングに感じられ、何もうまく行かないことなどないような気がする。これはアルテタのアーセナルにも言えることで、チームが以前は敗北を喫することが多かった相手に勝利を収められるようになったことや、FA杯を優勝したことも相まって、ほんの数か月前までアルテタのアーセナルに対する期待と好意的な目線であふれていた。

だが、どうやら最近は夫のミケルが靴下を履いたままベッドに入ったり、木曜の朝にゴミ出しをするのを忘れがちである、などといった点が気になり始める時期が来たようだ。

だが、ここまでのアルテタのチームをよく観察していた人ならば、今のアーセナルの課題が突然現れたのではなく、ずっとくすぶっていたものだということがわかるはずだ。

そもそもアルテタがアーセナル監督に就任した時点で、彼が施行するポゼッション型のサッカーには不向きな選手たちがそろっていた。

したがって、より深くこのチームを分析してみる必要があるだろう。

まず第一に、アーセナルのxG得失点と実際の得失点の比較を見てみよう。xGはチャンスの質と量の指標なので、この比較により実際の結果がデータが示すパフォーマンスを上回っている/下回っているかがわかる。

(訳注: xGに関して詳しくはこちらを参照)

このグラフを一目見るだけで明らかなのは、アルテタとエメリのチームががチャンスの質と比較して、継続してそれが示唆するよりも多くの点を挙げている、かつ失点も少ないということだ。

エメリがプレミアリーグで14試合無敗を記録した期間中、アーセナルはxG的には21点分のチャンスしか創出できていなかったが、実際には33点も決めていた。

これをより詳しくひも解くために、ベンゲル最終年とエメリの初年度のシュートの位置を併せて比較してみよう。

アーセン・ベンゲルのアーセナルは131本多くのシュートを打ったが、これによりxGは6しか上昇しなかった。つまり、xGを1上昇させるのに22本ものシュートが必要だったということだ。

簡単に言うと、ベンゲルのアーセナルはゴールにつながる可能性が低い位置でのシュートも多かった、ということだ。当然、これらのシュートが枠内に飛ぶ確率も低かった。

皮肉なことに、実はこのような可能性が低い位置からのシュートをより多く決めていたのはむしろベンゲル時代よりもエメリのアーセナルだった。

ピッチの逆側でも同じ現象が起きていて、相手チームのフィニッシュの精度の低さとレノのスーパーセーブに助けられ、チームは負けを引き分けに、そして引き分けを勝ちに繋げることが出来ていた。

もちろん、サッカーとはそういうものだ、という見方もあるだろう。パフォーマンスで勝ったチームが常に勝つと決まっているわけではない。

だが、xGを永遠に上回り続けることは基本的に困難で、継続した成功を収めるうえでxGが指し示す以上の結果を求めるのは持続可能なやり方ではない。

したがって、エメリが22試合無敗から1992年以来最悪の成績を収めたのは、サッカーのデータ分析に少しでも興味を持っている人にとっては、まったくもってサプライズではなかった。

xGを結果が上回ることもあれば下回ることもあるのは当然だ。

残念なことに、アルテタのアーセナルもエメリ時代と同じトレンドを示しつつある。二人とも、内容やスタッツ面と現実の成績に乖離がある中で、スカッドの欠点をうまく覆い隠しながらそれなりに良い成績を収めた、という共通点がある。

上の図が示している通り、アルテタのアーセナルはそれなりに良いチャンスを作り出せてはいる。一試合当たりの平均xGは1.1だ。

だが、問題はその方法で、一試合平均のシュート数がなんと9本しかない。これは他のクラブと比べてどうかというと、大体ニューカッスルやクリスタル・パレスと同じ水準で、リバプールは一試合平均で17本とほぼ倍のシュート数を記録している。

このように少ない数のシュート数では、枠内シュート一本一本を絶対に決めなくてはならない、というプレッシャーが高まってしまう。

昨季はこのアプローチはある程度機能しており、チャンス一つ当たりの平均決定率は14.4%と、リバプールに次いでリーグ二位の数字を残していた。

だが、今季はそれが11%にまで下がっており、やはり現状のような一つ一つのプレイに完璧さを求める完璧主義者的なアプローチは試合を勝利に導くうえで長期間にわたって結果を残せるものではないということを証明している。

チャンス創出は最近のアーセナルの課題で、昨季のプレミアリーグにおけるチーム内アシストはデビューシーズンのペペだが、6アシストという数字はチェルシーのアスピリクエタと同じだ。

アーセナルのチャンス創出数は今季さらに下がっている。

したがって、アーセナルの相手ボックス内への侵入回数が同時に減り続けているのも驚きではないだろう。

アルテタが両ウイングを中心に攻撃を作ろうとしているのは一目で見て取れるが、中央からの攻撃の頻度があまりに減りすぎているのは懸念点だ。

ベンゲル時代はタイトなエリアでもスペースを見つけ出そうとし、相手DFが密集した状態からでも無理やりこじ開けられるだけの技術を備えたMFが多くチームにいた。

そのような選手が現スカッドにおらず(少なくとも登録されているメンバーには、という意味だが)アルテタがアワール獲得を熱望していたことは公然の秘密となっている。

もちろん彼がアーセナルにやってくれば今の鈍いアーセナルの攻撃に新たな一面をもたらしてくれるだろうが、とりあえずはアルテタはより効果的に現有戦力を活用する方法を見つけ出す必要がある。

伝統的な意味でのプレイメイカーがいない場合はプレスにより相手のミスを誘発するというのは有効な方策で、これはグアルディオラが良く行う策でもあり、またアルテタもアーセナルに来た直後はこれを採用していたが、今季それは全く持って見られなくなっている。

そろそろアルテタは、オールドトラフォードでトーマス・パーティとエルネニーの二人が実はとんでもないハイクオリティのプレスを披露し、うまく遂行することが出来ればこの戦術がどれほど相手を苦しめるかを思い出すべきころあいではないだろうか。

また、もしここまで読んでくださったあなたがxGやペナルティエリア侵入回数といった用語にも振り落とされずについてきてくれているのであるなら、PPDA(Passes per Defensive Actions: 守備アクション一回当たりのパス数)の話を少しだけさせてほしい。

これは、チームがボールを奪取するまでの間に相手チームにどれだけパスを回されているかの指標だ。現在のプレミアリーグのランキングを見れば、アーセナルがプレスの意識が非常に低いチームだというのがわかる。

現代では少ないポゼッションをできる限り多くのチャンスにつなげるというチームは多くあるが、現在のアーセナルの面々が展開するボールを保持しても前に進めないというスタイルは、まるでそれに対するアンチテーゼであるかのようだ。

だが、ガブリエルとパーティはアルテタが監督として実権を握っていこうに獲得された選手で、そして得点王克キャプテンである選手も監督が直々に説得し、残留させた。

そして、現在の第一GKは、高評価を受けていたマルティネスを売却してまでチームに残した選手だ。現在のチームの半分程度の選手はアルテタが望んだ選手であるはずだ。

クラブがパブロ・マリとセドリック・ソアレスの獲得を決めた時点で既にアルテタは監督だったわけだし、ルイスの契約延長と、ウィリアンに3年契約をオファーする当為決断に関しても同様だ。

もちろんこれらに関しては、サンジェイの影響の大きさを軽視することはできないが。

だがムスタフィに役割を与え、サリバはまだ準備が出来ていないという決断をくだし、エジル、ソクラティス、ゲンドゥージをメンバー外とすると決めたのはアルテタだ。

今のチームがボールを保持して行うサッカーに適していないというのであれば、その責任の一端はアルテタにもある。アルテタのチームでもあるのだから。

とはいっても、ほんの一年前までアルテタに監督の経験が全くなかったのは事実で、しかも当時のエミレーツスタジアムを取り巻く空気は史上最悪といってもいいくらいだった。

エメリの後継者は難しい仕事を引き継ぐことになるとわかっていたはずだ。

その後の11か月でルーキー監督はクラブにトロフィーをもたらし、強固な守備を一時的にとはいえ形成することに成功した。

監督を毎シーズン代えて結果を残すようなチームはほとんどなく、同時にアーセナルの問題点が監督よりも深いところに根差しているというのも事実だろう。

もしかすると、今は我慢の時なのかもしれない。

最後に一つ楽観的になれるデータを紹介しよう。昨季アーセナルの失点のうち46%はセットプレイからのものだった。だが、今季ここまでアーセナルが直接セットプレーから失点した場面はゼロだ。

これに関しては監督がチームの弱みを認識し、修正することに成功したということだ。

同じようにアルテタは、もう少しすれば他の問題も修正してくれるかもしれない。

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Posted by gern3137